イサルートで、某青い砂集めてる団体が某赤髪の評議員さんの官邸に忍び込む時、もしイサと一緒に軍本部に行かなかったら、というIFストーリー(長い)
ハスラー+ユノです。今まで以上に甘さもへったくれもないです。
バタバタと慌ただしい音に不安を掻き立てられて、座らされたソファの上で落ち着きなく身じろぎする。
忍び込む時もとっても怖かったけど、忍び込まれるのはもっと怖い。
それはどちらも、忍び込んでるURCのみんなの命が心配でくる怖さだ。
「落ち着かないな」
一人冷静なハスラーさんが私の前のソファで優雅にお茶を飲んでいる。
「怖いかね?」
「そりゃ…怖いです」
「今来ているのは君のお仲間だろう」
「みんなが心配で、怖いんです」
無事でいて欲しい。
今まで成功してきたからって今度も大丈夫だとは限らない。
まして、相手は今横にいるハスラーさんだ。
イサだって出てきてる。
「そう怖がることもない。茶でも飲みたまえ。少しは落ち着く」
目の前のテーブルには見慣れないお茶とかわいらしいケーキ。
あまり飲む気分でも食べる気分でもないけど、他にできることもないので、そっと華奢なカップを手にとった。
りんごのような甘い香りを放つお茶を一口含む。
「どうかね?ここの者が淹れるカモミールティーはなかなかだろう」
カップに落としていた視線をハスラーさんへと向け、もう一度ゆっくりとカップに落とす。
「カモミール…って言うんですか?これ…」
カップを回して中のお茶が波立つのを眺める。
ゆらりと揺れた先から甘い匂いがする。
「ハーブティーの一種だ」
外が静かになった。
みんなはまだ来ていないのだろうか。
ここに連れてこられる前は警備の人が慌ただしく行き交っていた。
「ティータイムを楽しむ時間くらいはあるさ」
私の思考を読んだかのような言葉に驚いて、カップから顔を上げる。
少し意地悪そうな笑みを浮かべたハスラーさんと視線が絡んだ。
「…もっとも、君は楽しめないだろうがね」
カップをソーサーに戻し、膝の上で手を組む。掌がじっとりと汗をかいていた。
「ど、うする気ですか?」
「どう、とは?」
「みんなを…」
馬鹿な問いだとはわかっている。
この人は評議員。そして、私を――プラエを捕らえる手配をした人だ。
「私は私の仕事をするだけだ」
思ったよりは曖昧な返答。明確な答えが聞けなかったことに少しほっとしたけれども、だからといって変わる訳じゃない事実に俯く。
「…君には悪いが、奴らには君は渡さんよ。青い砂もな」
ハスラーさんが私の横に腰掛け、服越しにチョーカーに触れる。
形を確かめるように、左横から正面へ指を滑らした。
…イサが言った『首輪』という言葉が蘇る。
私はまだ、この人から逃げることは出来ない。
足音が近くなる。
解放されるかもしれないという期待は無く、あるのは不安。
みんなは青い砂を求めに来る。
私がここにいるとわかれば、みんなはどうするのだろう。
この人はどうするつもりなのだろう。
…私はどうなるのだろう。
「…客人が来たようだな」
私から手を離して立ち上がったハスラーさんは、いつもと変わらぬ顔でドアを見据えた。
END
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こんなティータイムは嫌だ!
カモミールティーはりんごのような香りと言われますが、水無は和菓子の香りだと思いました。残念な嗅覚。
ミントティー飲んで歯磨き粉思い出す人種なので仕方ない。
イサの首輪発言に吹いたのは私だけじゃないはず。
そして首輪の主は閣下じゃないかと考えたのも私だけじゃ…ないはず…?