おお振りで榛名←阿部。
阿部中三時代のもやっとした話。
このもやっとさ加減が恥ずかしい。だだはじ!
夏前。中学最後の大会まであと少し。これが終わったら俺達三年は卒業して次の代に代わる。
そんな大事な時期、俺は練習に集中できないでいた。
何かが、足りない。
じりじりじり
虫が啼く。
夏が近い。
じりじり
苦い思い出と希望、夢、絶望がないまぜになる、夏。
練習に集中しなきゃいけないのに、何故か頭に浮かんでくるのは憎たらしい顔。
(元希、さん)
無意識に頭の中であの人の名を呟いたことに気付き、頭を振る。
あんな人のこと、なんで考えてるんだ。
今は集中しなきゃ駄目だろ。
じりじり
集中しなきゃ、と思うのにあの人の顔ばかり出て来る。腹立たしい。
この夏が終わったら受験だってある。
…あの人と同じ高校だけは絶対選ばない。あの人に縛られるのはもうごめんだ。
そうだ。高校から、やっと俺の野球が始まるんだ。
あの人に振り回されることなく野球ができるんだ。
なのに。
頭に浮かんでくるのはあの人の顔。
じり…
何かが、足りない。
その何かの正体に気付きたくなくて、休憩中だというのに、グラウンドに向かって走り出した。
END
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短っ!
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