庭球で千石×阿久津。
またもや前サイトからの使いまわし。
ゴクアクなのにアクゴクくさい罠。だだはじ。
阿久津が居た。
普段はこんな時間まで居るどころか、学校に来る事さえ珍しいのに。
バッチリ目が合ったから無視するなんて出来ないし、する気も無かったから、取り敢えず隣に腰を下ろす。
阿久津は相変わらずタバコを吸っていた。
「阿久津…珍しいね、こんな時間にこんな所に居るなんて」
「あ?」
「帰らないの?」
「…メンドクセェんだよ。
そういうお前こそいいのかよ?」
「…ちょっとだけだよ」
ホントはちょっと長く居るつもりだったんだけど。
…仕方、ないか。
会話が途切れる。
阿久津は変わらずタバコを吸う。
薄紅の陽が差すその横顔に。
理由もなく。
胸が、騒いだ。
「タバコ」
「あ?」
「一本頂戴」
「…珍しいじゃねぇか」
「まぁね」
火を貰い、浅く息を吸い込む。
「……不味い」
「クッ。…餓鬼だな」
「美味いと思ったんだよ」
「馬鹿じゃねぇの?」
馬鹿じゃ無いよ。
――馬鹿じゃ…無い。
「…阿久津」
「何だ?」
「こっち向いて」
「何だ…」
触れるだけの口付け。
それでも。
苦いタバコの味が、した。
「…やっぱりこっちの方がいいな」
「…なんだそりゃ」
「……秘密だよ」
阿久津の態度は、少しも変わらない。
変わる筈も無い?
「じゃ、俺はもう行くよ。
南が今頃探し回ってると思うからさ」
「ああ…」
立ちあがり、扉に向かい歩き出す。
後ろは振り向かない。
ガチャン。
明るい外から黴臭い踊り場へ。
後ろ手にドアを閉めた体勢からズルズルとそのまま床へと座り込む。
「どうしようもないなぁ…俺」
阿久津。
俺がタバコを美味しそうだと思ったのはね。
それが阿久津の味だからだよ。
それが阿久津を造り上げてるモノだから、だよ。
――阿久津の身体の隅々にまで染み渡ったタバコ。
――それを口にすれば、阿久津を何処までも近く感じられると思った。
「こんなの…只の思い込みだけどね」
屋上はやっぱり考え事には向かないのかもしれない。
…自分を苦しめるだけ。
――この想いは、昇華なんて出来る筈も無いから。
――俺の心の隅々に染み渡っているから。
――あの、タバコのように。
あのタバコの味に今更むせる。
苦くて苦くて。
涙が、零れた。
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